“交通事故の後遺障害で気を付けるべき症状の一つにPTSDがあります。PTSDとは心的外傷ストレス障害と呼ばれる病気です。例えば交通事故のように強い恐怖を感じた場合に、それが記憶され、何度も思い出すなかでストレスが強化されてしまい、日常生活のなかで強い恐怖によって生活に支障が出てしまうという症状がみられます。他にも戦争に行った兵士や、大規模な災害に巻き込まれた人のように、大きなストレスを感じた人がかかりやすい病気といわれています。交通事故によってももちろん引き起こされるのですが、問題は外部からは発症が見えにくい点にあります。骨折のように明らかに交通事故が原因として発生した怪我であれば、原因は事故であることは明白です。その一方でPTSDは心理的な問題であるため、発症の時期が交通事故の発生と同時ではありません。事故後数週間、数か月経つうちに、事故のことを再体験し、何度も思い出す中でPTSDを発症することになります。いったん強いストレスで発症してしまうと、恐怖感で車に乗れなくなったり、バイクの音がすると体が動かなくなってしまったりするような症状が現れていきます。このような症状によって、現代生活には必須と思える交通手段から切り離されて、快適な日常生活を送れなくなったりするわけです。
交通事故後に発生したPTSDの問題は、治療の困難さだけではなく、治療の費用面でも発生してきます。通常交通事故の被害者の治療費は、加害者側の契約している任意保険によって賄われることになります。当然、保険会社側は費用を抑える希望を持っていますので、なるべく多くの症状は認めたがらず、骨折などの分かりやすい治療が終了した段階で症状を固定したがるわけです。症状固定後に発生した治療費は原則保険からは支払われません。問題がここにあります。通常骨折などの症状固定は、目安としては事故発生から6か月ほどが標準的ですが、PTSDの発生は事故後数か月から一年程度で発生することがあるので、症状固定後に精神的なストレスが大きくなって交通事故が原因とするPTSDが発症しても被害者はその治療費用を保険会社から受け取ることができないのです。さらに、症状固定日よりも前に発症した場合でも、原因が交通事故であることを示さなければなりません。保険が適用され、費用を保険会社からもらうには被害者が自分で動く必要があります。他の原因がないこと、具体的には長時間労働や家庭の不和など他のストレスになりやすい要因ではなく、あくまで事故のストレスが過剰になっていることを示すことが、被害者から医師に明確に伝える必要があります。
事故後に生活を立て直しながら、事故との因果関係を証明していくことは被害者にとって非常に重荷になります。こういった辛さを軽減するには、例えば弁護士のような法律家に依頼することも一つの方法です。自身で行うには大変な手続きを代わりに行ってくれるだけでなく、他の要素である、賠償金総額の交渉などもまとめて引き受けてくれますので、弁護士費用を払ってもある程度の回収の見込みがあるのではないでしょうか。医師による治療を受けながら、さらに加害者側のプロである保険会社の人間と交渉を行うのは更なるストレスにつながりかねませんし、症状の悪化原因にもなりかねません。医師による適切な治療が受けられなかったことが症状の悪化につながったと見なされれば、治療費の減額につながりかねません。まずは、自身の状況判断をプロに任せ、きちんとした医療を受けることで生活の立て直しを図るのが一番ではないでしょうか。弁護士等プロに依頼するなり、家族の手助けを得るなりして、自分のストレスの原因を少しでも減らし、復帰の道筋を付けることをお勧めします。
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