“(記事1)
交通事故に巻き込まれた被害者として、加害者側の対応にどうしても納得できない、許せないということもあるでしょう。
こうしたときにできる手続きや対応としてどのようなものが考えられるか、順に説明していきます。もちろんここで説明するのは合法的なもので、たとえ相手が加害者だとしても加害者側に暴力をふるったり社会的な評判を傷つけたりすれば犯罪になりかねません。くれぐれも軽はずみなことはしてはいけない、ということに注意してください。ここで説明する方法や手続きを検討する際には、弁護士による相談を受けたり弁護士を代理人にして行うことをおすすめします。
交通事故の被害者として加害者の責任を追及するための手続きは、事故直後に始まっています。それが警察による実況見分で、実はここでの対応を誤ると、加害者の責任を追及することが難しくなることもあるのです。実況見分は警察官と加害者が事故現場に赴いて、事故の状況を説明させそれを文章や図面、写真に残す手続きです。その結果は実況見分調書と呼ばれ、保険会社や、加害者が検察庁に書類や身柄を送られた場合には刑事訴追されるかどうか、裁判での量刑にもかかわってきます。
しかし、ここで被害者として警察官から加害者に厳しい処分を望むか聞かれて、思わず「厳しい処分は望まない」などと答えてしまう交通事故被害者の方もいます。答えたあとで後遺障害が出たり示談交渉がうまく行かなくても、こうした発言が記録に残ればそれを撤回することは難しいのです。まずここから、加害者が許せない場合の手続きは始まっているのです。
(記事2)
交通事故の加害者は、行政上の手続きといえる警察での実況見分を終えると、起こした事故にもよりますが検察庁に記録や身柄を送られます。つまり、刑罰を科すための手続きが始まるわけです。無免許や飲酒運転などの状態、あるいは被害者が死傷したなど結果が重大である場合は警察は加害者を逮捕したうえで加害者の身柄と事件の記録を検察庁に送りります。そこまで深刻な事故ではない場合には加害者を逮捕せず、実況見分などの結果からなる書類を検察庁に送ります。書類送検という言葉を聞いたこともあるでしょう。
身柄や書類を送られた検察庁は、事故の加害者、つまり刑事手続き上の被疑者を起訴するかどうかの検討に入ります。検察庁でこの手続きを担当する人、つまり検察官は加害者の取り調べをおこなうほか、被害者からも事情を聴取することがありますので、加害者が許せない場合にはこうしたタイミングを捉えて事故後の後遺障害や相手の対応、処罰してほしいという思い(処罰感情といいます)を説明する準備をしてください。犯した罪の種類や重さにもよりますが、被害者が厳しい処罰を望まない態度を取った場合、犯罪はあっても起訴しない、起訴猶予の処分がでることもあります。
逆に加害者側に弁護士がついていれば、このタイミングで被害者と示談できるかどうかは加害者が起訴されるかどうかに関わるため、示談にしてほしいと被害者側にアプローチしてくることもあります。
(記事3)
交通事故の加害者側を起訴する、つまり処罰を受けさせるために裁判を始めるかどうかをきめるのはあくまで検察官です。
残念ながら被害者の考えが検察官に通じないで加害者を不起訴処分にする、つまり裁判の手続きを始めないこともあるでしょう。こうした場合に、さらに被害者が加害者を許せないとき考えてほしいのが検察審査会への申立です。検察審査会は検察官が不起訴処分にした事件について、被害者や第三者からの申立をうけてその事件を検討し、検察官の不起訴処分が相当なものであるかそうでないかの結論を出す機関です。検察審査会はもちろん国が設けた制度ですが、抽選で集められた一般市民が申立を検討するので、この検察審査会で不起訴不当の結論がでることもあります。不起訴不当の議決が出た場合は検察官が再び事件を検討して、起訴するかどうかを決めなければならないことになっています。
これらが、交通事故の加害者が許せないときに刑事上の責任を追及するための手続きです。加害者に対して民事上の、つまり金銭的な責任を問いたいという場合には弁護士を選任して民事訴訟(損害賠償請求訴訟)を起こすのは被害者として一般的に考えられる対応です。近年では自動車保険の特約に弁護士費用を補う特約がセットされていることも多く、交通事故で民事訴訟を起こすことは徐々に難しいものではなくなってきているといえます。”
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